090119
昨年末より読んでいた小説の作家の訃報を遅ればせながら耳にして、悔しい気持ちがいっぱい。
もっとたくさん書きたかったこと、プランや構想があっただろう、これからという時期に思い残すことは多くあっただろう、と思いをいたす。きっと自分でも信じられなかっただろう。
これは書き手の問題だけではなくて、読み手とて「ああ、あの本を読むつもりだったのに」と思いながら死んでしまうのだ。いつ時間が尽きるのか、それが前もって分かっていたとしてもきっと思い残すことは数多くあるだろう。それでも、こんなにせつない。
Francisco Casavella(1963-2008)、あなたの手を最後に離れた作品
を、僕はゆっくりと時間をかけて読みますから。
寺田寅彦『柿の種
』岩波文庫。
年末年始はなぜか寅彦に縁があった。これは『渋柿』という俳句雑誌に寄せられた短文を集めたもので、そうするとこのタイトルもなかなか味わい深い。一冊書棚にこれがあるだけで、その人の読書に奥行きがうまれそうな。
実際は身辺雑感などが多く含まれているのだけれど、肩の力を抜いて書いた文章にも多分に気品があるようで、とても気持ちよく読める。
本人は「ゆとりのあるときに読んで欲しい」と考えていたようだけれど、そうでない人でもパラパラと思い当たったページを読むと、折々に発見があるかもしれない。
寅彦もまた年の瀬に亡くなったのであった。


